「一つは明日からの学校。通常なら欠席でも問題ないが、どうやらテスト期間らしい。あいつは特待生……つまり、テストを放れば困窮に拍車をかけるわけだ」
「……あのナリで勉強できんのか、あいつ」
「母親譲りだろう。記憶力がとくに優れている」
「気持ち悪ぃほど詳しいな、お前」
ボコン———。厘は眉を持ち上げ、悪態をついた頭上に拳を食らわせた。
「で、本題は二つ目だ」
「華麗にスルーすんじゃねぇ!」
「手が滑っただけだ。喚くな」
「っ、……いつか痛い目見せてやる……」
なんだ、やり返してこないのか、と一瞬目を見張り、先を続けた。
「もう一つは、その中身にいる夢魔をどう追い出すか、だ」
「あぁ?知らねぇよそんなもん」
「考えろ。岬の命に関わる」
後半を強調すると、庵は頭を抱えて唸りだす。「命だぁ?」と何度も重ねながら、ため息も混じる。その様子は真剣と呼んでも相違なく、岬の名を出したのは正解だったらしい。
「……前者の方は、俺がなんとかできる。お前が協力すれば、だけどな」
やはり、正解だった。