「白々しい……岬に移る前『最高』と言っていただろう。一体、何が違う」
「あぁ~……、そうね。そうだった」
わざとらしく見開かれる瞳。猿芝居にもほどがある。もしや、誘惑に乗らなかった嫌がらせだろうか、と眉を寄せた。
「岬は規格外に憑きやすいのよ。それに、操りやすい。他の人間は窮屈なのに、この子は魂の居場所が広い感じ。……わかる?」
「わからんな」
憑いたこともないのに解るはずもない。
しかし確かに、あの少女のときと岬である今とでは、言動が全く違う。操りやすい、という表現は気に食わないが、嘘をついているわけではないらしい。
「それとお前、いつまで乗っ取るつもりだ」
ただ、このままの状態を許すわけにはいかない。
完全憑依が保てているのは、悪霊であるが故。つまり、岬の精気はその分減らされる。できる限り早く追い払わなければ、危ういどころではない。
———致命傷になり兼ねない。
厘は焦燥に駆られた。その様を見据えた早妃は、岬の顔で微笑んだ。
「うーん……内緒かな」
妖艶に、執拗に。