「もしかして、同性愛者の類い?」

「答える必要がどこにある」


厘はゴクリと喉を鳴らしながら、彼女の肩を強引に遠ざける。岬の身体を纏っている分、余計に扱いにくい。


———諸々散漫、顔を歪めた。


「へぇ……なるほどね」

「何がだ」

「この体の娘……ミサキ、って言ったっけ。随分大事にしているのね」


彼女は、気だるげに垂れた瞳を細め、妖艶な笑みを点した。


「あぁ、ごめんなさい。私は早妃(さき)っていうの。地に追放された悪魔にも、名前はあるんだ」


悪魔———。

反芻する。半分憑依を経ず、岬を乗っ取ることができたワケ、憑いていた汐織が枷にならなかった理由にも紐付いていく。


厘はさらに顔を歪めた。


「悪魔というより、お前は悪霊だろう」

「ふふっ……そう呼ばれるのも、嫌いじゃない」


早妃はおもむろにブラウスのボタンを外しだす。今朝、岬が時間を掛けて選んでいた、レース生地のブラウスがはだけていく。


———『どう、かな……お母さんのお下がりなんだけど、』


脳裏を擦るあどけない声。目の前の事情と合わせると、これ以上ない程ばつが悪い。