「よく見ろ……男共の息が荒ぇだろ……異常に」


僅かだった。庵から言われなければ気づかないほど、些細な音量。それは、遠目に写る彼ら(・・)だけのものではないことを、岬は悟った。


庵も、微かではありながら厘も同様。握られた手首に伝わる体温は、今までにないほど高温だった。


「野生の勘だけどな……あの女は危険だ。絶対近寄んじゃねぇぞ」


何かを堪えて絞り出された庵の声。汗ばんだ額と湿った群青の瞳に、岬は唇を噛み締めた。


「生憎、俺も同感だ。どうしても助けたいというなら……俺が行く」


どうする、と厘に問われ口籠る。


……いつも私は何もできない。厘がいなければ、女の子一人救えない。もし……もし、お母さんだったらどうする。


紙袋を握りしめ、岬は俯いた。


『岬は、出来てるよ』

「……え?」


内側で、さざ波のように穏やかな声が響いたのは、ちょうどそのときだった。


『少なくとも俺が長くここに居るのは、岬の温度が心地いいから。あ。変な意味じゃなくてね?』

「汐織……」


霊魂といえど、心の声を掬われたのは初めてのこと。それでも違和感を覚えなかったのは、汐織の鋭さを知らされて来たからだろう。