庵が立ち止まったのは、およそ数分後。


「ここだ……ここが一番キツイ」


センター街の、空気を割るような賑わいが嘘のよう。正面に写る路地裏だけが、街から切り取られたように静まり返っている。ただ、人の影はいくつも見えるのが一層不自然極まりなく、まるでテレビの無音状態だった。


「ほう、原因はあの(たか)りか」


物怖じする岬とは対照に、厘は堂々前を行く。そして、頬を紅潮させたままの庵は力なく放った。


「ハッ……なるほど……引き付けられてんのは全員野郎共、ってワケか」


岬は喉を鳴らす。
月を隠し、曇天へ移り変わった空の下。藻のように無音で集る男たちが、一人の少女を囲っていたからだ。


「ねぇ厘、あれって……」

「ああ。様子がおかしい。男共だけでなく、あの娘もだ」


厘の言葉を反芻し、再び前を見据える。

壁に追いやられている少女は覇気がなく、目は虚ろ。彼女を囲う男たちよりはるかに小柄で、獣に狙われた小動物のよう。しかし、動揺の気配はない。


確かに『様子はおかしい』けれど———最悪を案じた岬は、思わず一歩踏み出す。


「……どうして、」

「やめろ、行くな」


制止したのは庵だった。