「よし分かった。まずは肉、その次にパンケーキ。コレでいいだろ」

「だから、何故お前が決める。そんなに肉が食べたいのなら一人で行けば良い」

「あぁ?! こんなとこ俺様を一人にすんじゃねぇ!」





ハンバーグとパンケーキ、おまけに期間限定のソフトクリーム。
庵が(渋々)素直に『一緒に行かせろ』と放った後は、想定以上の都会畑を堪能し、腹八分目どころか十二分にも達しようとしていた。


「おい、ソッチの味も少し寄越せ。絶対に俺様の味噌ソフトの方が旨いけどな」

「絶対にやらん。岬はいいのか」

「うん……実はもうかなりお腹いっぱいで」

「そうか。女子(おなご)の胃が小さいというのは本当なんだな」

「アハハ……」


食欲の秋と言えど、明日からはほどほどに抑えなければ……。随分ご機嫌になってしまった、と自分の脇腹をこっそりつまみながら、岬は苦笑した。


『大丈夫。岬はもう少しふっくらしてもいいくらいだよ』

「そんなこと……って、汐織は体型までわかっちゃうの?……恥ずかしい」

『うーん、体重位なら当てられるかも?』


内側の彼に「やめて」と懇願する。



街の片隅で漂う異変には、まだ誰一人として気づいていなかった。