厘は白の、庵は緑黄色の水筒を選び、雑貨屋を後にする。

色違いの包みと、“THANK YOU”と綴られたリボン。二人には内緒でラッピングを施した商品を、岬は大切に抱えた。二人の背を見据えながら、笑みが零れた。


ああ……どうしよう。名残惜しい。


巡らせても、これ以上の口実は思い浮かばない。踏み出す一歩の幅は無意識に狭くなるばかり。昔、母と出掛けた遊園地の帰りに駄々を捏ねたことを思い出し、岬は首を振った。


「岬」

「……?」


赤信号を前に、振り返る厘。歩幅は違うはずなのに、離れず傍にあった温もり。太陽がきらきらと照らす白髪に、目が眩んだ。


「他に行きたい場所はないか」

「……え?」

「欲しいモノでもなんでもいい。……付き合ってやる」


伏せられた鈍色の瞳が、垣間見るようにこちらを覗く。薄い耳がほんのり染まる。岬は息を吸った後、「いいの?」と羽織の裾をつかんだ。


「俺ぁ、あのでけぇ肉が食いたい」

「……お前には訊いていない」


すでにテンプレート、妖花同士のやりとりにも笑みが漏れる。


———『用を済ませたらすぐに帰るぞ』


先刻、刺された釘を思い返しながら、熱が込み上げた。


「私も、お腹すいてきちゃった」


身体の芯から込み上げる。油断をしたら、ほんの少しだけ涙が零れそうだった。