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「厘は何色がいい?」
街中の雑貨屋。岬は厘を覗き込んだ。
「さぁな……特段、好きな色はないからどれでも構わん」
人の世では稀有な白髪。先の尖った長いまつ毛は、頬に綺麗な影を落とす。瞬きの度に、多くの視線が注がれている気配もきっと、気のせいではない。
彼の見てくれは、広い店内でも息をつく間もなく話題の中心となっていた。
「おい岬、俺はコレにするぞ」
そして、庵も同様。学校生活で培った地獄耳が、美形に囲まれたあの小娘は一体、と放たれた囁きを拾い上げる。慣れない注目のされ方に、頬が赤く染まるのを感じた。
「う、うん、いいね。軽いから持ち運びしやすそうだし、色も庵にピッタリだよ」
「んで、何に使うんだよ、こんな筒」
ち、近い近い……!
岬は周りの視線を気にしながら、顔を近寄せる庵から顔を背ける。
「さ、さっき教えたとおりだよ。これは水筒、冷たい水が冷たいまま保管できるんだよ」
庵が選んだ緑黄色の筒を差し出すと、「本当にぬるくなんねぇのか」と怪訝な表情を浮かべる。とはいえ、今回の外出に課していた “二人に水筒を贈る” という裏ミッションは、順調に進んでいた。