「イチョウは雌雄異株。つまり、鈴蘭のような草花よりも性別が明確に分かれていてな」
「そうなんだ……」
『確か、実をつけるのはメスだけだった気がする』
汐織の声が補足する。つまり庵は彼女を助けるために、人の姿になったということ。
「やっぱり、悪い人じゃない」
「……は?」
正面で眉を顰める庵。隣を見上げると、厘も同じ表情をしていた。
「本当は、優しいよね。庵って」
……こういうところも、やっぱり二人はよく似ている。岬が笑みを漏らすと、庵は視線を逸らしながらほんのり頬を赤らめた。
「うるせぇ……」
まるで、秋の身支度をする葉のように。