ああ、よかった。また、すぐに会えるよ。四十九日から一週間、完全に彼の世へ逝ってしまった居場所に、きっと、すぐに。
「阿呆……勝手に逝くな」
岬が男の声を聞いたのは、意識が遠のく寸前。艶のある低い声は印象的、それでもぶっきら棒に落とされた言葉の意味は、何一つ届いていなかった。
「悪いが、起きてもらうぞ。岬」
ぬるい体温が唇に触れる。視界は暗闇に包まれているはずなのに、傍にリリィがあるのだと確信した。よく摂りこんでいた香りが漂ったからだ。清廉で可憐な香り。岬は一層安堵に包まれ、深い淵へと堕ちていった。
もっと深く。戻れないくらい深く。戻れなくたって構わない。
———そう捧げていたから、
「ようやくお目覚めか」
上からぬっ、と覗き込む白髪の男が見えたとき(この人は閻魔大王さまかイザナギさま、どちらだろう……)と岬は巡った。
「私……悪いことはしていないので、出来れば天国へ行きたいです」
「……なんだ。俺を摂りこまないうちに、耄碌したのか」