「っ……、」


思わず閉じていた瞼を持ち上げると、鉛色の大きな箱が目の前に横たわっていた。脇に佇んでいた掃除用具入れだと気づき、岬は足を竦ませた。


『危なかった。あと一歩踏み出してたら君、下敷きになってたよ』


用具入れに視線を落としながら、()の存在を思い出す。内側から響く警告が無ければ、立ち止まることはなかっただろう、と更に背筋が凍った。


「……今度は、男の子?」


岬は腕を擦りながら、憑依した新たな霊魂に尋ねる。


『全然入るつもりじゃなかったんだけど、君が潰される寸前だったから』

「じゃあ、私を助けるために……?」

『まぁ、そういうことになるかな』


優しく、でも張りのある爽やかな声。青さが抜けきっていないため、享年はみさ緒よりも若く感じられる。ただ、


『君は結構あれだね。危なっかしい感じだね』


口調は冷静で、妙に大人びていた。


「あの、ありがとう……本当に危なかったみたいだし」

『いいよ。それより用具入れ、一人で直せる?』

「うん。やってみる」


と意気込んだものの、かなりの重量。秋風に押し倒された、とは考えにくい。もしかしなくとも、あの白の矢と関係があるんじゃ、と鉛色に手を掛けながら巡らせた。