「や……」
「何してんだよ、おっさん」
やめてくださいっ……———懸命に絞り出そうした声は遮られ、握った拳は解かれる。岬は正面を覆う影に目を見張った。
「いっ……タタタタ!!」
男の手首が何者かによって掴まれ、突き上げられていた。見ている方まで痛々しいと思えるほど、太い手首はキリキリと皺を刻んでいく。大蛇は呻いた。
「目障りなんだよ。男が、嫌がる女に手ぇ掛けんのが。……わかったら、さっさと失せろ」
突如現れた助け船。
絵の具で塗ったように斑のない金髪。背は丸まっている割に高く、声は少し掠れ気味。見上げると睫毛がとても長く、こちらも黄金色。それと———岬は彼の纏う服に再び目を見開いた。
「ッつ……俺ァ、制服参を考にしたいって頼んでただけだ……!」
同時に、手を解こうと暴れる大蛇の気迫に一歩退く。瞬間、金髪の彼は「フハハハッ、これで技が入るぁ~!」と舌を巻きながら、口角を持ち上げた。
ゴキッ———。
華麗で見事なハンマーロックに、男の関節が弾ける。声すら出ないといった表情に、金髪の彼は乾いた笑いを響かせた。
「ガハハハハッ、観念したかクソ野郎ー!」
恩人といえど、どこか悪役臭の漂う言動に、思わず苦笑を浮かべた。