———ねぇ、みさ緒。もう声は聴けなくなってしまうけど、きっと、また会えるよね。そう……たとえば、私がこの世を去る時には。
「また、変なことを考えていないだろうな」
「……うん。何も」
でも、御免なさい。それはもう少し先の事になりそうだ。
「息、止めるなよ」
約束通り。岬は意識を保ったまま、ゆっくりと目を閉じる。徐々に近づく清廉な気配と香りに(あぁ、やっぱり……目が覚めていない時のほうが、よかったかも)と、心臓が喚いていた。
「ん……」
上から被さる柔い唇。隙間から注ぎ込まれる、温かい気流。
「あと少し、我慢しろ」
身体を支えてくれている腕も、唇の体温も、緊張の糸を解すように巡る精気が、心地良さに変えていく。
「……はい」
満月の夜。濡れた頬を拭う掌に安堵しながら、岬は身体を委ねた。