四十九日。縁もゆかりもなかったはずの言葉は、蝉の声が染み入るのと併せ、 花籠(はなかご)(みさき) に踏み入った。


この世と()の世をさまよう期間——母の命日から数えて、先週の月曜が四十九日目。


そっか……だから、こんなに空っぽなんだ。


岬は空を仰ぎながら帰路を進む。灼熱、四時を回っても日差しが弱まる気配はない。しかし、岬の額には汗ひとつ滲まなかった。コンクリートから伝う熱気すら、感じることができなかった。


夏休み明け初日、始業式なのに授業があって、みんな不満を零していたなぁ。それでも、久しぶりにクラスメートと顔を合わせるのは嬉しいのか、式が始まる直前まで随分とにぎやかだった。


——— " 今日は学校、どうだった? ”


母の常套句が、乾ききった(こころ)を巡る。


……もう聞かれることはない。解っているはずなのに、どうして答えを用意してしまったのだろう。決して当事者にはなれない(・・・・・・・・・)学校での出来事をうまく繕う癖は、たった二ヶ月弱ではそう抜けない。


それでも、培った嘘を手放すことでさえ出来なかった。素直に嘘を受け入れる母の甘さに、毎日癒されていたから。


「あれ……」