どうにか話題を絞り出したが、みさ緒は『えぇ』と容赦なく不満を放つ。磨く機会のなかった会話センスが、不本意にも露呈した。
『そんなの直ぐに終わっちゃうじゃない。……まぁいいわ。私が着ているのは、全身黒のワンピース。どう?味気ないでしょ』
それでも受け入れてくれたことに鼓動は緩み、思わず笑みを溢した。
「そんなこと……私もワンピース、よく着るよ。夏はとくに。みさ緒ちゃんは黒が好きなの?」
『全然。全っ然、好きじゃない。……ていうか、その呼び方やめない?みさ緒でいいから』
「う、うん……分かった、みさ緒」
下弦の月夜。夜が更けっていくのを眠気から感じ取る。
その後も声を交わし続けたが、みさ緒がただの霊魂ではない、と気付く余地は無かった。少なからず、岬には無かった。
『岬』
「うん?」
『あなたって、もしかして処女? あんなのと暮らしてるくせに』
「へ……しょ?!」
『あぁー、顔の表面あついわ。これは図星ね?』
むしろ、母親以来の(少し刺激の強い)女子トークに、密かに高揚していた。みさ緒に限らず、いままでも———この体に取り憑く霊魂が、友人と呼べる関係にもっとも近い存在だった。
「そ、そりゃあそうだよ……まだ十七だもん……」
たった一ヶ月間、限定の。