霊は、欲に忠実かつ寂しがり屋。生前の性格を引き継いでいる事と別に、およそ共通しているその特徴を、岬は経験に教わっていた。


別れ際、胸に空洞が掘られたように、ガランと穴が空くことも。


「おい、みさ緒。岬との話を遮るな」


厘は不機嫌そうに腕を組む。


『岬はあんたとなんか話したくないの。さ、行こう。もう寝る時間でしょ?』

「あ、いや……確かにもう寝ないと……ね?厘もそろそろ寝よっか」

「……勝手にしろ」


慣れない仲介を勝手でると、眉を寄せたままそっぽを向く妖花。どうやらいつも通り、この居間で一夜を越すようだった。


あやかしといえど、異性は異性。同じ寝室で過ごす選択肢は、配慮に長けた厘には初めから無かった様に思う。耐性のない岬は、初日にも胸を撫で下ろした。それは、半分憑依が纏う今日も例外ではないと知り、改めて安堵した。


「おやすみ、厘」

「あぁ」


それでも、「おやすみ」くらい言ってくれてもいいのになぁ……。岬は密かに眉を下げ、見送るように襖を閉めた。




『全く、本当に厄介者ね。あいつ』

「うーん……でも、良い所もたくさんあるよ。ご飯もすごく美味しいし」

『ふぅん。あんまり甘やかしちゃダメよ?』


布団を被ると、みさ緒は『温かいわね』と微かに加えた。今までになくか細い声で、衣擦れの音に紛れてしまいそうなほどだった。


「寒くなったら、教えてね」

『平気よ。それより岬、今日は何を話しましょうか』

「え、っと……みさ緒ちゃんの、今の格好とかが気になるかな」