「岬に憑依体質が無ければ、俺は早々にお役御免だろう。まぁつまり……お前の精気を吸い取っているのが、そいつら霊魂というワケだ」
再び、厘の視線が空へ移される。
「精気を、吸い取る……?」
不穏な響きに、強く脈を打つ心臓。うなじの産毛が逆立ったのは、厘の視線が自分の後ろ側へ向けられていたからに違いない。十中八九、“彼女”はそこに———
『吸い取る、なんて心外よ』
中からの反論に、岬は唇を固く結ぶ。
『私たちは別に、好きでそうしてるわけじゃないからね?岬』
穏やかな声色に、少しばつが悪くなる。厘の言い分とは異なるみさ緒の主張に、岬は首を傾げた。今日だけで、知らない事実が鱗のように、斑に重なっていく。
自分の体のことを、ただ不可思議で超現象的な事情として片付けていた今までを、こっそり悔いていた。