「噂というのは何だ。岬の体に棲みつき易い云々の情報が出回っているのか。お前ら、霊魂の間で」
そして、今日新たに分かったこと———岬の他、厘に限っては中の声が同様に届いているということ。みさ緒の姿が視える事に関係しているのかもしれない。
『そういうことになるわね。久しぶりに生身の身体を味わえるとなれば、死びとの誰もが欲するでしょうよ』
「はァん……それでお前も噂を確かめに来たワケか。みさ緒ちゃん?」
厘は、岬の頭部に視線を充てながら、口角を持ち上げた。その表情に身震いを覚えたのは、どうやら自分だけではないらしい。嗄れた声が『だから苦手なの。この人』と呻いていた。
「あの、厘」
「なんだ」
ようやく厘と視線がかち合う。瞬間改めて、彼は本当に視えているのだと悟った。
「知ってたの……?私の、その、体質のこと」
「そりゃあな」
「最初から、鈴蘭のときから……?」
「知っていた。何と言っても、お前の体調面がままならないのは、その至極厄介な体質に紐付いているのだから」
体質のせい……?
今まで考えもしなかった。母もそんなことを口にしたことは無かったし、同じく知らなかったはずだ。……たぶん、知らなかったはずだ。