心の片隅に潜んでいた罪悪感が、ゆっくりと溶けていく。しかし、終わりはあまりにも唐突だった。
『っつ……』
閉じられた瞼の向こうで、陽だまりが呼んでいる。まだ聞き足りないことも、言い足りないことも、山ほどあるというのに。
どうやら、最後らしい。
互いにそれを悟った厘は、靄の向こうに在る宇美の眼差しをようやく受けとる。それだけで、足りないものすべてがパズルのように嵌まっていくようだった。
『あ……!そうそう。まだ来ちゃダメよ?二人とも』
陽気に放たれた、最期の言葉。おおらかで、しかい震えた彼女の声に、厘は潤んだ瞳で天を仰いだ。目を覚ました時、誰にも涙を悟られないように。
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「———……岬?」
瞼を開くと、雲間から覗く日の光が、彼女の後ろに差し込んでいた。それはちょうど宇美を思わせる、暖かい温度だった。
「好きだよ……厘」
“まだ” どころか、当分逝けそうにもないぞ。宇美。
喉から絞り出したようなその声に、厘は笑みを零しながら思いを馳せた。