「私の力だけじゃ、足りないの」

「……割る?」

「そう。中身を取り出したいの。お願い、庵」


ようやく視界を明らめ、仰向けになった厘を一瞥してから、庵は目を丸くする。岬はその反応を前に唇を噛み締めた。庵が動揺するほど、一体どれほどの精気を注いでくれたのだろう。瀕死になるまで、どうしてやめなかったのだろう。


パリンッ———!!
逡巡の最中、横で響いた音で我に返る。視線の先では庵が拳に血を流し、「ほら」と “中身” を差しだしていた。一瞬だけ、目眩がした。


「言っておくが、こんなかすり傷すぐに塞がる」

「かすり傷、」

「気を散らすな。お前が今構うべきは、あのどうしようもねぇ(うつ)け野郎だろ」

「っ、うん」


言われてすぐに、庵の傷口と刺さった破片から目を逸らす。


「ごめんね。あとで、手当てするから」

「いい……平気だっつってんだろ」

「ありがとう。庵」


ばつが悪そうに頭を掻く庵から、黄色い花弁を受け取る。ペンダントに収まるように刻まれたその花弁は、「向日葵なんだ」と母は言った。


———『向日葵はね、太陽を探して、まっすぐそこへ向かう力があるの。たとえ “ただの花” であっても、精気の力は妖花に負けないくらい強いの。だからね、岬、』


もしも厘が瀕死なら、すぐにそれを呑ませなさい。そうすれば、———