いつもよりも青白い肌。覇気のない瞳。岬は彼の、血色の薄い頬に手を添えて、懸命に微笑んだ。唇が震えてしまわないよう、力を込めた。
「大丈夫……少し、頭痛がしただけだよ」
反対側で額を押さえながら、岬は堪えた。そして直感した。この場所から早く退くべきであることを、底に眠る何かが訴えていた。
「厘。歩ける?」
「……ああ。お前は本当に平気か」
「うん。早く……早く帰ろう」
岬は立ち上がり、冷えた厘の手を強引に引く。河川敷を出ようと、強く草を踏みしめる。———しかし、それは叶わなかった。
「ッ———!?」
草木が足元に絡みつくように、離れない。足首を噛まれているように感じるほどの、鋭い痛み。それに、
『……前の……だ』
籠った音で、頭の奥に響く声。次第にその音は大きく、明確になっていき、岬は言葉の意味を悟った。
———『お前のせいだよ』
鈍器で脳を殴られた感覚。何度も、何度も。同じ言葉をなぞる声に、岬は顔を覆った。
「う、ぅ……」
「岬……?」
ダメなのに。ここから出なきゃ、ダメなのに。意志とは反対に、岬は再び河川敷に沈んだ。