『岬。もっともっと』

「え……まだ食べるの……?」

『えー、俺は全然たりなぁい』


喉を通すのが億劫な心情のなか、飛沙斗のリクエストは容赦なく、答えている間に岬の胃は疾うに限界を超えていた。


「も、もう無理だよ……」


最後には逆流を予感した胃と口元を押さえ、呻いた。


「水を飲め。ほら」

「あ……ありがとう、厘」


差し出されたグラス。喉に流し込まれる冷水があまりにも心地よく、水分を欲する厘の気持ちが手に取るように分かった。


「あまり無理をするな。それと、無理をさせるな」


岬と飛沙斗は交互に返事をする。直後、厘は「最後にもう一つだけ」と席を立った。どうやら『女子(おなご)だらけ』の雰囲気にも慣れ、スイーツも余程気に入ったらしい。それにしても———


「いいなぁ……厘は、いくら食べても太らなくて」


厘の皿に盛られた、彩り豊かなフルーツタルトに視線を落とす。しかし、瞳に映すだけでも胃は呻き、すぐさま視線を持ち上げた。


甘いものは好きだけど、ここ最近は体型を気にせず食べられた試しはない。永遠に解決しないジレンマを浮かべながら、岬はその細い体を羨んだ。