「ただし、原因は違います」

「じゃあなんだ」


思考を読んだかのような台詞に、厘は眉を寄せる。庵が胡嘉子を好かない理由にも、いよいよ見当がついた。


「彼女に触れて解りました。普通なら閉ざされているはずの “扉” が二つ、開いています」

「……また扉か」


今日はそればかりではないか。先刻まで岬にべたり張り憑いていた幼い霊も、常識であるかのように放っていた。生憎、こちらは全く見当がつかない。


「魂の中には二つ、在るんです。霊魂の介入を許す扉。そして、憑依を許す扉が」

「介入と憑依? 二つの違いはなんだ」

「介入を許すだけで、人を操ることは出来ません。しかし、岬さんの魂はその内の一つがこじ開けられていた。まるで、無理やり錠を破ったように」


無理やり?———復唱する前に、胡嘉子は続けた。


「一つ目が引き金となって、二つ目の開錠も許してしまっている……そんなイメージです。本来なら拒むことが出来るはずの介入を、許してしまっている。つまり、彼女の優しさが仇となっているのです」


厘はますます顔を(しか)めた。