「解りましたか?」
「は、はい……」
高揚の収まらない胡嘉子に、岬はたじろぎつつも頷いた。
触れることで身体の性質、宿る力、すべてを透かすことができるという趣旨。特別な妖術の正体が見え、岬は納得した。彼女に厘が依頼したワケは、おそらく———。
「では、肩の力を抜いて。邪念も失くして。ゆっくり、息を吐いてください」
気怠さの抜けた歯切れのよい口調。慎重を語る瞳に、思わず緊張の糸を張る。しかし、言われた通り息を吐き切ると、自然と力は抜けていった。
ブワッ———。
胡嘉子の低い体温が額に触れる、その瞬間。菊の香りが全身を巡る。喩えるなら、厘を摂り込んでいた感覚に近い。目を瞑っているはずなのに、眩暈がする。ぐわり、目が回る。ときおり混じる線香の香りは、酔いを加速させた。