「つまりな。摂り込むのを一定期間止めた場合———お前は死に至る」
鋭い双眸とは裏腹、白髪から香るそれは確かにリリィの香り。……ああ、だから私は、得体の知れない安心感を彼に感じていたんだ、と今更糸が解けた。
「そっか……ずっと本当に、守っていてくれたんだね」
柔和に目を細める。リリィはその表情を見るなりさらに眉を寄せた。
「分かっているのか。此度それで死にかけたこと。俺を、摂り込まなかったばっかりに」
怒っている。
「あ……え、と……確かに眩暈はいつも以上に酷くて。でも、倒れたときはもう……助からなくてもいいかなって、思ったの」
「それは、母親と同じ場所へ逝きたいと思ったからか」
「……うん」
直後、掴まれていた顎から低い体温が剥がれる。リリィはその手を額に当て、大きく息をついた。
「言っておくが、宇美はそんなこと望んじゃいないぞ。全くな」
宇美、母の名前だった。それに「望んでいない」と刻む口調は明らかに核心を持っている。岬は首を捻った。
「リリィは、お母さんから何か聞いていたの?」