しかし、これほど屋台が蔓延っているのに、やたらと混みあう『わたがし』の列。子どもに根強い人気があるのか、買うまでに数分かかりそうだ。奇怪なことに、後ろにもまだ列は続いていた。


……大丈夫か、あいつら。


ようやく手に入れた飴菓子。箸にまとわりついた雲を片手に、厘は二人を案じた。庵は放浪していないだろうか。もしそうであるなら、岬は奴に付いて行っていないだろうか。


早妃に憑かれていた時にも感じていた不安が、再び過る。たった少しの間傍を離れるだけで、この有様だ。宇美よりも余程、俺は過保護なのだろう。


「あっ……おかえり、厘」

『へぇ、あんなでかいのにお遣い行かせてたんだ』


しかし今後は、より庇護欲を高めそうで恐ろしい。傍を離れた数分の間に、彼女には新たな霊が憑いていた。


「……またか」


厘は後ろに憑く少年を見据え、肩を落とした。


ここ最近の違和感。憑かれるペースが明らかに狂い始めている。悪霊・夢魔の早妃が憑いたあと、収まったとも思えた憑依の波は、再び強く打ち寄せてきた。


おかしい。この一か月で四度目だ。精気を注ぐ頻度も徐々に上がってきている。宇美が倒れる前にも、ここまでのハイペースは例になかった。