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「お前はどこでも食い意地が張っているな」
参拝を終えた後、厘はフランクフルトを頬張る庵に息を吐く。何も、両手に持つことはないだろうに。
「でも羨ましいなぁ。たくさん食べられるのって、幸せだよね」
岬も岬で、お門違いな感想を放っている。庵は満更でもなさそうに頷く。この大食らいが岬を気に入る理由は、偏にこの、鈍く朗らかな包容力にあるのだろう、と確信した。
「厘は、食べたいものない?」
「俺はいい。お前はどうなんだ」
「えぇっと……綿菓子、とかかな」
気恥ずかしそうに、岬は声を細める。参道に並ぶ屋台のひとつ、その綿菓子が売っている店の風貌は、鮮やかに色目立ちしていた。
「子どもが多いな」
「うっ……うん、そうだよね……」
なるほど。やけに恥じらっている理由はこれか。口を一文字に結んで目を逸らす岬に、思わず笑みが零れた。
「ひとつでいいか」
「え?」
「買って来てやる。そこで庵と待っていろ」
厘は人混みをかき分け、色とりどりに着色された屋台を目指す。その間、すれ違った人間のほとんどが手元に食べ物を持っていた。参拝よりも本来の目的は “こちら” なのでは、と思えるくらいに。