時は睦月、年初め。


「きつくないか」


キュッと帯紐を締めながら、縦に頷く彼女を見上げる。化粧を施しているせいか、紅色に色付いた唇が妙に艶めかしい。厘は喉を締め付けながら、己を律した。


「ありがとう」

「ああ」


クリスマスプレゼント、とやらに岬が頼んだ着付け。純白の和装は、無垢な岬によく似合う。それに、余程嬉しいのだろう。母親譲りの朗らかな笑みを浮かべ、彼女はくるりと回って見せた。


「どう、かな……?」


頬を緩め、はにかみながら問う岬。やはり、髪は結って正解だったな、と厘も頬を緩ませた。


「似合っている。お前が着ると、白無垢(しろむく)のようだ」

「そ、れって」


なんだ、意味が分かるのか。

口角を持ち上げると同時、彼女の頬は桜色に染めあがる。頬紅のせいでないことは一目瞭然で、至高だった。


「そ、そうだ、」

「どうした」

「ここの刺繍……たぶん、前はなかったと思うんだけど」


わざとらしく話題を変える様が、目に見えて可愛らしい。
あの一夜から。心の内で何かが吹っ切れ、厘は今まで以上に岬の反応を愉しんでいた。何がそうさせたのかは明確ではない。だが、声に出して改めて身に染みたのだろう。


『岬を俺に、くれないか』


この娘のすべてが欲しい。ともに生涯を添い遂げたい、と。