トポ、トポ、トポッ。

大きなペットボトルから波線上に注がれる。両手で支えながら、心許なく注がれる。溢さないよう慎重なその姿を、厘の瞳はぼうっと見据えた。得たいの知れない温い感情に、戸惑った。


「お待たせ。()いできたよ」


差し出されたグラスに唇を寄せ、ものの数秒で呑みこんでしまう。岬は神妙に見つめていた。


「……どうかしたか」

「本当に、これだけでいいの?」


遠慮がちに放たれる。図星を突かれた。


欲しいものは他にある。だが、岬が思い描いているモノとは確実に違うだろう。そう断言できる。


……思い知らせてみるのは愚行だろうか。岬にも分かるように、示してみるのは———。


一瞬、そんな邪念が過る。一瞬、伸ばそうとした手を握る。一見、理性はやはり有能に思える。


「……———!?」


しかし次の瞬間には、握っていたはずの手で岬の後ろ首を捉えていた。


目の前で見開かれる黒い瞳に、卑しい口角がくっきり映る。有能な理性と凶暴な本能は隣り合わせ、ということを、厘は痛感せざるを得なかった。


「物足りないのなら、口移しで(そそ)いでみるか?」

「……え、」

「そうだ。精気も同時に摂り込めて、一石二鳥だろう」