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岬は、あんなに脆かっただろうか。
アパートへ戻ったあと、厘はシャワー音を背に思い返していた。遊園地という奇怪な場所で起きた、出来事すべてを。
「……細すぎる」
感触の残る掌を見つめながら呟く。 早妃が消えたあとはほとんど我を失った状態だったが、改めて意識がはっきりしているうちに締め付けると、いかに脆いかが身に沁みる。幾度か涙も零していた。体と同じく、涙腺も脆いらしい。
……抱き着いてきたときだけは、やけに力んでいたが。
「ハァ……」
厘は額を抱え、長い息を吐いた。
———……どうする。
次またアレをやられたら、幾らなんでも理性が持たない。強靭だったはずが、最近どうも調子を狂わされている。
「厘、上がったよ」
「……あぁ」
体の周りに湯気を纏いながら、脱衣所を出てくる岬。見たところ、前々から完全に安心しきっているようだが、実際は危ういことを彼女は理解していない。諸々弁えていたとして、此れは紛れもなく雄———
精気を注ぐと託つけて、今から口を塞いだっていい。……そんな度胸があるなら、の話だが。