淡々と放つ厘に思わず目を見開く。図らずとも深読みしてしまいそうなセリフに、心臓も大きく音を立てる。
「あ、の……それは、」
「他に贈る相手など、思い浮かばん」
あぁ……ダメ。ダメ。ダメだよ、厘。浮足立ったらいけない。温度を合わせなきゃいけない。そう留めていたのに、歯止めが効かなくなってしまう。
分厚いコートに包まれた岬の体は、無意識に厘の体に触れていた。
「み、さき……?」
頭上から腑抜けた声が落とされる。同時に正面から響くのは、厘の鼓動。もっと近くで、鼓動を合わせてみたいだなんて———気づけば、彼の背に手を回していた。
「……え、あ……」
衝動に任せ抱き着いてしまった、と気が付いたとき、じわじわと汗が吹き出す。代わりに爪先は冷えていく。
……ああ、もう。ああ、どうしよう。
岬は顔を火照らせたまま、控えめに回していた腕を解く。あやかしの体温から離れようと、身体を退ける。
しかし、思い描いていた動作は叶わなかった。