日没までの数時間。

あれほど乗り物にはしゃいでいた厘は少し嗜好を変えたようで、散歩がてら園内をひたすら巡っている。途中で見かけたチュロスや、季節外れのソフトクリームを頬張って、しかし時折真剣な瞳で岬の頭を撫でた。


中の声に眉を寄せると、彼は優しく「平気か」と顔を覗き込む。その度、岬は笑ってみせた。時折、不安になって空を仰いだ。憑いている霊魂が苦手だということ以外にも、自分の身体に変化が起こっていることに、気づき始めたからかもしれない。 


……まだ蒸し暑かったあの頃に、極楽浄土を望んでいた私はもういない。厘と共に、生きていたい。


岬が明確に、そして久しく自分の体調を案じたのは、このときだった。だからこそ、満月を待ちわびた。