「岬。お前と、お前の母親が生けていた花は “妖花”。普通の花と違う点があるとすれば、一年中開花させること、人の姿に化けられること……あとは精気の量だ」
「妖花……精気……」
平らげた料理に両手を合わせ、岬はオウムを返した。
記憶は古くとも、母が読み聞かせてくれたおとぎ話、昔話の類には『人に化ける妖怪』や『動物』が登場したことは覚えている。けれど、まさか、花が化けるなんて。
思い伏せながらも、岬自身の脳裏に疑うという分岐は疾うになかった。自分自身も“ただの人間”とは言い難い存在であると、幼心に昔から悟っていたからだ。
「精気の件に関しては、お前にも思い当たる節があるだろう」
「え……それは、どうして?」
「母親から告げられていなかったか?『俺を摂りこめ』と」
彼の言葉に異論はない。言う通りだった。
母との約束、そして日課。身体の不調を訴えると、母は決まって言っていた。現に守らなかった影響で今日日調子が悪く、極楽浄土までもを目前にした。
「『リリィは私を守る、大切な薬』って言ってた……でも、それが精気と関係あるの?」
「大ありだ」