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<遊園地デートには、待ち時間という名の魔物が住んでいる>

雑誌に書かれた太字の見出しを思い出しながら、岬は隣を見上げる。


「ん、なんだ」

「う、ううんっ、何も……行こっか」


大丈夫、浮かれてない。

岬は心の内で “魔物” と “平常心” を交互に唱える。そうでもしなければ、二人きりで外出している状況に、恥ずかしいほど弾んでしまいそうだった。出来るだけ厘と温度を合わせて、同じ時間を共有したかった。


「体調に変化はないか?」

「うん。本当に、憑かれないみたい」

「そうか。しかし、油断はしてくれるな。いつ憑かれるか分からない」

「うん」


厘は至って普段通り。だから、絶対に隠し通さなければいけない。張り裂けそうなほど心臓がうるさいことも、端麗な横顔をこっそり盗み見ていることも。


風を切るコースターを頭上に、岬はドクドク、と脈を荒立てた。


「あれは、人が乗っているのか」

「え?」

「上の。蛇のような、」

「ジェットコースターのこと?」

「じぇ……なんだ、その奇怪な名は」

「奇怪って……」


真剣に眉を顰める彼の姿に、岬は笑いが堪えられなくなる。


「何がおかしい」


その様を見ながら放たれる言葉は、もはや常套句に等しい。
岬は首を振った後、「乗ってみる?」と袖を引く。怪訝そうにこちらを覗くその表情さえ、愛おしかった。