「お前のような娘が好むと、風の噂で聞いた」
再び、前へ差し出されたチケット。岬はもう一度その文字を読み上げる。間違いなかった。
「ど、ど、どうしたのこれ……」
たった一度きり、母に連れて行ってもらったことがあるが、もはや数年前の話。岬にとっては未知の世界に等しく、ともに羨望の対象でもあった。目は爛々と輝いた。
「当たったんだ」
「えっ、当たった?」
「スーパーの、懸賞に」
たどたどしく紡がれる厘の言葉に、岬は鼓動を速めた。
あやかしと人間───薄れない境界線。
だからこそ、俗世に通じていく厘を見るほど、同じ世界に生きていると実感して心が叫ぶ。岬は二つの意味で舞い上がった。
ああ。やっぱり、私は厘が……───思い伏せながら、岬はペンダントを握りしめた。
「私、行きたい。厘と行きたい」