妙に饒舌な様子に違和感を覚えながら、首を捻る。それでも、受けた誘いに息は弾んだ。
「……いいの?」
厘はあまり好きじゃないでしょ?
彼の真似事のように、裏に込めながら尋ねる。しかし彼は「いい」と一言、横目で岬を捉えた。照れ隠しの手段は変わっていないようで、岬は思わず息を漏らした。
「そうしたら、庵も一緒に誘ってみようか? 私、いまから聞きに行っても──」
「ダメだ」
「え、わ……ッ」
玄関へ向かう岬の身体を、片腕でいとも簡単に引き戻す厘。反動で、後ろから抱き寄せる形になる。こういう仕草は本当に心臓に悪い、と岬は頬を赤らめた。
「な、んでダメなの……?」
ぬるい体温を感じながら、横目で厘を見上げる。どんな角度から見ても綺麗な表情が、羨ましい。今までそれほど気にしていなかった “容姿” や “格好” が、昨今、岬の心を乱すことも少なくなかった。
可愛いと思われたい、なんて。
「二枚しかない」
「え?」
「二枚しかないから、ダメだ」
雑念の隙間。呆けた返事の直後、いきなり目の前に現れる紙切れ。厘が指の間で挟んだそれは、思いもよらない代物。
「えっ……これって、」
遊園地のペアチケットだった。