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相手は悪霊。何をしでかすか分からない。扉を開く時も、玄関へ足を踏み入れる時も、油断はしていなかった。


「おかえり」

「……っ!?」


それでも厘は、一歩足を退けざるを得なかった。


「あれぇ……もしかして、照れてる?」


玄関前。出て行ったときと同じく、両手足は枷でしっかりと縛られているが、着ている衣服すべてが捲れ、至るところで肌が露になっていた。


「なんだ、その恰好は」


厘は視界を覆いたくなるのを堪えながら、横目で彼女を垣間見る。動揺を悟られないことが最善と解っていても、真正面で捉えることはさすがに憚られた。


心もとなく狭い肩。くっきりと窪みを浮かべる鎖骨の池。ぼやけない華奢な体型の代わりに、控えめな胸元。透き通ったように白い肌、脚。下着で覆われている一部を除き、露わになっていた。


「うーん。少し暑かったから」

「何を抜かす。気温は摂氏十八だぞ」


眉を顰める厘を見上げ、息を吐くように笑う早妃。最低限の用を足せるように、と前に枷を付けたのが悪かったのだろう。でなければ、衣服は脱げない。両手の枷に引き止められた肌着とニットがその証拠。


……くそ、妙に生々しい。


「でも、少し驚いたよ」

「……何がだ」