晴天の空の下、眩しい日差しを身に浴びながら、黄丹色(おうにいろ)に染まった着物の裾をはためかせて男は歩いていた。月光よりも透き通った銀色の髪が、日差しを透かして輝きを放つ。

 堂々とした立ち振る舞いで、何の躊躇いもなく道の真ん中を大股で進む。その姿は、自信という言葉を形にしたようだ。

 その後ろには、十ほどの屈強な男たちを引き連れていた。

 胸を張る男を先頭とした集団の行進に、道ゆく人々は足を止めて見物する。

「ねぇ、あの人ってまさか……」
「ええ。多分、新しく皇位についたって噂の人ね」
「何でも、旧皇帝を殺したとか……?」
「ご兄弟も惨殺されたようよ」
「まぁ、怖い。まるで死神のような方ね」
「しっ。聞こえるわよ」

 当然、男の耳には聞こえていた。だが、彼はまるで何も聞いていないかのような涼しげな表情でその場を過ぎ去っていった。

 彼の後に続く者たちも、顔色ひとつ変えずに決まった歩幅で前進する。

 やがて、男はとある建物の前で止まった。

苑鎧(えんがい)よ、ここが例の孤児を集め、女房を育てる宮というのは?」
「はっ。正しくこの場所でございます」

 男の質問に、すぐ後ろについていた男ー苑鎧ーがひざまずく。彼だけが、先頭を歩く男、そして他の男とは違う色の服を着ていた。

 先頭を歩いていた男は朝日が地平線に顔を出した時の眩しい光の色を纏っているのに対し、苑鎧は深く神秘的な深紫の(ほう)を着ている。そして、彼らの後ろにつく男はみんな縹色(はなだいろ)だった。

 目も覚めるような色とりどりの男たちの袍は、彼らの階級を表す。

「なるほど。着飾っている場所ほど裏がある、というわけだな……」

 男は顔を上げて建物の全貌を見つめ、それから口角をニッと吊り上げた。

「さて、ようやくお目にかかれるのだな。私の妻に」