俺はロングソードを購入した武器屋に、オルガさんと来ている。
 ドアを開けると、この前のドワーフがいた。

「よお、この前のあんちゃんかい。まさかもう剣が駄目になったとかは無いよな」
「俺はエリアスと言います。実はそのまさかです」
 俺は鋼の塊をテーブルの上に置いた。

「エリアスか、それは悪かったな。て、なんじゃ、これは」
「元、剣です」
「こんなドロドロになるとは。いったい何をしたんだ」
「それは俺のスキルです」
「スキルじゃと」
「はい、ですが…」
「スキルなら言いたくはないだろうな。だが聞かなければ剣は作れんぞ」
「特注で作るほどお金はないですよ」
「なら、いくらなら出せる?」
「10万円がギリギリです」
「ならその金額で作ってやろう。このブルーノ様の名にかけてな」

 そして俺は剣に炎を纏い、温度を上げたら溶けた事を話した。
 温度が上がるに連れて赤⇒黄⇒白⇒青色と色が変わる。
「温度で色が変わるのは知っているが、そこまで高温にできる技術は無いぞ」
「はい、ではやって見せますね」
 俺はそう言い手に炎を纏わせ、実際に炎の色の変化を見せた。
「いったい、なにをしてるんだ!」
 と、逆に驚かれた。
 
「ほう、ではバグベアをやった時の色は一番熱い青色てことかい」
「はい、炎を纏わせるだけでは剣は溶けません。溶けたのはバグベアの内部で温度が上がり、炉のようになり溶けたのではないかと思います」
「そうか、纏わせるだけなら溶けないのだな」
「そうです」
「では、振れる重さを測ろう。そこにある剣を振ってみろ」

 シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

「ほほう、この前より腕力が上がっているじゃねえか。両手剣を片手で振るのか」

 そう俺は両手剣を片手で振れるようになっていた。
「両手剣を片手剣にしてみるのも面白いな?」

 俺は【スキル】世界の予備知識で武器を調べ、お目当ての武器を見つけた。
「ではこういう武器をお願いします」

 その剣の名は『トゥ・ハンデッド・ソード』だ。
 両手で扱う為に柄は長く作られ、剣身も最大級の大きさがある。
 全長約1.5m、重量は20kg。
 刺突攻撃をするため剣先が鋭く、重量と打撃で叩きつける大剣だ。


 俺は剣の概要を伝えた。
 柄を二握りではなく、1.5握りくらいにして片手剣にしたい事を伝えた。

「おもしれえ、このブルーノ様に作れない武器はないぜ。だがこんな長さなら鞘もなく、抜身で担いで持っていくことくらいしかできないぞ」
「えぇ、構いません。俺はマジック・バッグを持っているので」
 そう言うと俺は首からかけている、ダミーのポーチを叩いて見せた。
「あぁ、それは凄いな。マジック・バッグと大剣の組合せなんて、考えたことは無かったぜ」

 俺が以前、住んでいた世界の中世ヨーロッパでは、重い武器の普及には鎧の進化があった。
 防御力の高い鎧に対抗するには、重量と打撃で叩きつける大剣が選ばれた。
 しかし、その大きさと重量のため腰には吊るせず、背負ったり肩に担いだりして持ち歩いた。
 遠征時は馬や馬車に積んで持ち運んだそうだ。
 でも俺ならストレージに収納すれば問題はなかった。


 そして材質についての話になった。
「半端なヒヒイロカネがあるから、それを鋼に混ぜてやる。そうすれば少しは耐熱作用や強度が上がるだろうて」
「ヒヒイロカネですって!」
 オルガさんが驚く。

「高いのですか?」
「もちろんよ。ヒヒイロカネは幻の金属とも呼ばれているの」
「そんな高価なものを」

「まあ、ヒヒイロカネは半端な量だから気にするな。ナイフ1本も作れん」
 そう言いながらブルーノさんは笑った。

「作るのに1週間はかかるな。それまでの間、これを貸してやる」
 ブルーノさんはそう言うと、両手持ちのクレイモアを渡してくれた。

「いいんですか?」
「あぁ、冒険者が剣がないなんて話にならないからな」
「ありがとうございます。大事に使います」
「手付に少し入れてくれれば良いから」
「特に使う当てもないので10万全部、払います」
「おう、そうかい。では…「いいや、私がここは払おう」
 オルガさんはそう言ってお金を出した。

「そこまでして貰うわけには」
「エリアス君は、私の命の恩人だからな。こんなことぐらいでは恩は返せないさ」

 パンッ!パンッ!
 また尻尾で背中を叩かれた。

 オルガさんはなんて義理堅い人なんだ。
 助かるよ、ほんと。

 帰るとき、ブルーノさんに「あんちゃんも大変だな」と、言われた。
 なんのことだ?
 そして俺達は武器屋を出た。


「では、これで。機会がありましたらまた会いましょう」
「エリアス君はどこに泊まっているの?」
「『なごみ亭』て、宿屋です」
「そうなんだ。じゃあまたね!」
「さよなら」