襖を開けて入ってきたのは、薄桃色の長い髪に裕太と同じ青い瞳の女の子。
可愛いらしい顔立ちで、守りたくなるような風貌で、どことなく裕太と雰囲気が似ている。
しかし何故か、眉間に皺を寄せている。
「兄様。また仕事怠けたでしょう?」
「秋雫……。せめて、一声かけてから開けてくれないかな。女の子なんだし、もっと礼儀を……」
「怠けてる奴に礼儀なんか弁えません!」
「今日ばかりは勘弁してくれないかな……秋雫も会いたがってた人を連れて来たからさ」
「はあ? いったい何を言って……」
彼女の視線が、茉結の方に向けられる。
「は、初めまして、茉結と申します」
「えっ……ま、茉結お姉様ですか?」
いつの間に姉になったのかは分からないが、とりあえず頷く。
──あら。私のことを知ってる……?
「お姉様とお呼びしてもいいですか? 」
「えっ? は、はい……」
ついさっき、呼ばれた時にも特に抵抗はなかったものの、至近距離で言われると断りにくい。
「兄から話を聞いていて、ずっとお会いしたかったのです。お話で聞いていたより、ずっと綺麗でお美しい方ですね」
「あ、あの、秋雫さん……?」
「秋雫って呼んでください」
「あ、秋雫……ちゃん?」
流石に初対面のひとを呼び捨てには出来ないので、『ちゃん』を付けて呼ぶと、可愛いらしい顔を輝かせた。
「……兄様。今日は見逃します」
「ありがとう」
「お父様とお母様には?」
「さっき伝えたよ」
いつの間にか、裕太の両親にまで茉結のことが知れ渡っていた。
「あの、ふたりは……兄妹?」
「そうだよ。茉結より、ふたつ下になるのかな」
「わたし、兄より姉が欲しかったので。仲良くしてください。茉結お姉様」
「僕がいる前で言う?」
目の前の兄妹が繰り広げる会話に、つい笑みがこぼれる。
「こちらこそ、仲良くしてくださいね。秋雫ちゃん」
「はい!」
その後すぐ、友人と用事があるのでと、秋雫は足早に部屋を出た。
「ごめんね。うちの妹が」
「ううん。可愛らしい妹さんだね。私の妹もあんな感じで凄く可愛いから」
下の兄妹のことを思い出してハッとする。
「わ、私、勝手に家を出てきたけど……。お父さんたちにどう言えば……」
「ああ。その件なら大丈夫だよ」
「え?」
「『成哉さんの件が落ち着くまでは、娘さんは僕の家で責任を持って預かります』って言ってあるから」
「ええっ!?」
心配していたことがもう既に解決されていて、驚きが隠せない。
「大丈夫。君のお店も家も、なくならないから」
「ゆうくん……」
茉結は、ぎゅっ、と裕太に抱きついた。
「ありがとう。ゆうくん」
裕太は、茉結の頭を優しく撫でた。
可愛いらしい顔立ちで、守りたくなるような風貌で、どことなく裕太と雰囲気が似ている。
しかし何故か、眉間に皺を寄せている。
「兄様。また仕事怠けたでしょう?」
「秋雫……。せめて、一声かけてから開けてくれないかな。女の子なんだし、もっと礼儀を……」
「怠けてる奴に礼儀なんか弁えません!」
「今日ばかりは勘弁してくれないかな……秋雫も会いたがってた人を連れて来たからさ」
「はあ? いったい何を言って……」
彼女の視線が、茉結の方に向けられる。
「は、初めまして、茉結と申します」
「えっ……ま、茉結お姉様ですか?」
いつの間に姉になったのかは分からないが、とりあえず頷く。
──あら。私のことを知ってる……?
「お姉様とお呼びしてもいいですか? 」
「えっ? は、はい……」
ついさっき、呼ばれた時にも特に抵抗はなかったものの、至近距離で言われると断りにくい。
「兄から話を聞いていて、ずっとお会いしたかったのです。お話で聞いていたより、ずっと綺麗でお美しい方ですね」
「あ、あの、秋雫さん……?」
「秋雫って呼んでください」
「あ、秋雫……ちゃん?」
流石に初対面のひとを呼び捨てには出来ないので、『ちゃん』を付けて呼ぶと、可愛いらしい顔を輝かせた。
「……兄様。今日は見逃します」
「ありがとう」
「お父様とお母様には?」
「さっき伝えたよ」
いつの間にか、裕太の両親にまで茉結のことが知れ渡っていた。
「あの、ふたりは……兄妹?」
「そうだよ。茉結より、ふたつ下になるのかな」
「わたし、兄より姉が欲しかったので。仲良くしてください。茉結お姉様」
「僕がいる前で言う?」
目の前の兄妹が繰り広げる会話に、つい笑みがこぼれる。
「こちらこそ、仲良くしてくださいね。秋雫ちゃん」
「はい!」
その後すぐ、友人と用事があるのでと、秋雫は足早に部屋を出た。
「ごめんね。うちの妹が」
「ううん。可愛らしい妹さんだね。私の妹もあんな感じで凄く可愛いから」
下の兄妹のことを思い出してハッとする。
「わ、私、勝手に家を出てきたけど……。お父さんたちにどう言えば……」
「ああ。その件なら大丈夫だよ」
「え?」
「『成哉さんの件が落ち着くまでは、娘さんは僕の家で責任を持って預かります』って言ってあるから」
「ええっ!?」
心配していたことがもう既に解決されていて、驚きが隠せない。
「大丈夫。君のお店も家も、なくならないから」
「ゆうくん……」
茉結は、ぎゅっ、と裕太に抱きついた。
「ありがとう。ゆうくん」
裕太は、茉結の頭を優しく撫でた。