「分かった、俺は中広場一旦行って、谷口先輩の来たコースを戻ってみる」

「じゃあ、彰、また後でラインいれる」

「了解」

駿介が、砂月のことを気にした様子を見せたが、そのまま走り去って行く。

「砂月、テント戻ってろ。テントからお前は出るな」

「で、でも……」

「お前が憑かれたら皆んなが迷惑すんだろ!」

口に吐いてから、自分でも呆れる位にどうしようもない奴だと思った。いつもならこんな言い方は、絶対にしない。

砂月が、自分に話せないことがあったって、全然おかしくも何ともない。

むしろ普通のことだろう。何でも俺に話して欲しいなんて、ただの独占欲だ。俺にそんな権限なんてないのはわかっているのに、俺は、自分に隠し事をした砂月を、許せない気持ちの方が大きかった。

気まずさと後悔とやるせない気持ちが入り乱れて、俺は、砂月の方を振り返りもせずに走り出した。


五分程走ったところで、中広場に到着する辺りを見渡すが、桃の姿はない。目を凝らして生い茂る樹木を目視していくが人影一つない。桃は赤いワンピースを着ていた、近くに居ればわかりそうなはずだが、桃の姿は見あたらない。

「春宮彰ー!」

「藤野!桃いた?」

愛子は、肩で息をしながら首を振った。