「なんで?高校は、手繋いだらダメって決まりでもあんの?」

「……そうじゃないけど、彰は、その……困らないかなって」 

「困る?」

「うん、他の女の子にどう思われる……かなとか」

私は、あの時見た、あの情景が頭の中に蘇ってくる。

今日こそ、彰に聞いてみたい……ほんの少しの勇気を出そうとしながら、もう3日たっている。

「俺が?別に他の女に何思われてもいいけど。砂月が憑かれなかったらいいわけだし。
前、下足ホールに居たじゃん、死んだゴキブ」 

「彰っ!」

私が一番苦手な、虫の名前を言おうとして意地悪な顔をした彰が、私を見下ろした。

「幼稚園の時からだからさ。砂月が、嫌ならやめるけど?」

彰はズルい。答えを私に求めるから。答えなんて、決まってるのに。

「じゃあ……あの黒いの、下足ホールにいるかもしれないからお願い」

頬が熱い。彰は、私から視線をそらすと、頭をガシガシと掻いた。