あれから砂月が、特に憑かれることもなく、
あっと言う間に時は過ぎ去り、夏休みに入る頃だった。

「え?何のことっすか?」

「夏休み終わりの合宿のことだ!何故だ!二年も三年も来ない上にお前らまでっ!」

朝から谷口先輩の鼻息と共、に唾が降ってくる。

「谷口先輩、その件はさっき欠席でと、お伝えしましたよね?」

ピンクの苺ミルクこ紙パック片手に愛子が、口を挟んだ。隣には砂月が愛子の腕に捕まっている。

「愛子ちゃん、私、……」 

「砂月、さっきも話したでしょ?今回はね……」

「なぁ、愛子どういうこと?」

駿介が、机に寝そべったまま、愛子に訊ねる。

「まだ先だけど八月末に、陸上部恒例の合宿があるんだけど……。場所は、例年近くのキャンプ場に一泊二日。体力アップの基礎トレーニングがメインで、夜は川の水を使ったカレー作り。テント張って雑魚寝。夜は真っ暗。キャンプ場には墓地も隣接してる」

(川といえば水難事故……墓地といえば言わずもがなオバケ……)

「なるほどね、俺と砂月パスで」

「彰!何故だ!一緒にカレーを食べて山をかけぬけ、寝床を共にしよう!」 

「いや、無理っす」 

寝床って……。軽く頭を下げる俺を見ながら、砂月が、何か訴えているのが分かったが、わからない振りをした。

キャンプ場なんて、何に取り憑かれるかわかったもんじゃない。絶対だめだ。