「お前が、砂月に対して、過保護な理由もよく分かったよ」

「砂月は、窮屈かもしれないけどな」

「何?俺に言われて自信なくした?」

「元々そんなもん持ってねーよ」

「でも一生懸命じゃん。大切なものは大切だって、ちゃんと主張できるお前が羨ましいよ」

駿介の言葉は、いつもの揶揄いでもなく、嫌味でもなく、素直に発せられたように思えた。

何となく居心地の悪くなった俺は、駿介から目線を逸らした。

「褒めてるんだよ、俺ももっと、必死に取りにいかなきゃいけないのかもな」

砂月のことじゃないよ、と駿介が釘をさした。

明日も俺が生きていて、砂月も生きていて、そんな明日は誰も保証してくれないし、そんな不確かな日々は死ぬまで続いていく。繰り返されていく。

ーーーー俺たちの魂が終わるまで。想いは伝えなきゃ伝わらない。


「なぁ……藤野って、今までも憑かれた人見たことあるのか?」

「何でそう思う?」 

「……あんな怖がって泣くのって、憑かれることを知ってる奴だろ?……俺もさ、正直、毎回ちゃんと祓えて、ちゃんと砂月が戻ってきてくれるのか不安でたまらないからさ」 

「なるほどね。おめでとう、正解」

わざとらしく手を叩くと、駿介が口角を上げる。

「あのな、お前も捻くれてるよな?」

「ありがとう」

「褒めてねぇし」

きゅっと目を細めた俺を見ながら、駿介がクククッと笑った。

「言ったけど、俺と愛子幼なじみでさ、愛子ん()と隣同士なんだ。小さい頃は、よく近所の子達でかくれんぼとかさ、肝試しとかしてたんだよ。その時は、俺も小さかったから、まだ憑くとかもあんまり分かってなくてさ」

駿介が、長い足を組み直した。