俺達のクラスは、一年一組。ちなみに一年は一組しかない。ちなみに二年生と三年生は二クラスだけ。全校生徒合わせて百人弱の生徒数だ。

うちの学校はとにかくクラブの数が多い。他校との差別化を図る為らしいが、一人でも居ればクラブと認められるなんて、クラブとは言えない気がするのは、俺だけだろうか。

「あーきーらーくーん!!」 

俺が、席につくのを見計らったかのように、黒髪を地肌が見えそうな位に、刈り上げたガタイのいい男が、俺の机に遠慮なく腰を下ろした。

「なんすか、今日も朝から。谷口剛(たにぐちたける)先輩」

「いーかげん、うんって言ったらどうだ?」

「返事変える気ないんで」

「俺が、これほど欲しいと思った人材は、お前が初めてだ!春宮彰!」

俺の机に腰掛けながら、ぐりっとした二重に大きな鼻と口が特徴的な先輩が、鼻息荒く圧をかけながら俺を見下ろした。

「もうすぐ一ヶ月っすね、早く諦めてください」

「嫌よ嫌よも、というだろう?」

声を顰めて、真面目な顔で落とし込みに入ろうとする。
「マジで嫌です……俺、帰り砂月と帰るんで」

谷口先輩から踵を返すと、ちらりと対角線上の砂月を見た。砂月の隣の席の何とか愛子とかいう奴と、楽しげに喋っているのが見えた。

「出た出た!砂月が理由なら、俺が送って帰るって言ってるだろ?」

俺の後ろの席に座るや否や長い足を、俺の座席の下から、つま先で蹴り上げながら、後ろの男が会話に入ってくる。

「うるせーよ!駿介(しゅんすけ)。大体お前の家、俺らと逆方向だろっ」 

同じクラスの三浦駿介(みうらしゅんすけ)。邪な男の一人だ。コイツは砂月に気がある。それも大いにだ。