屋上から見上げた放課後の空は、鮮やかな青に白い鰯雲が、所狭しと散りばめられ、浮かんでいる。合宿が終わり、あっという間に、季節は秋に移り変わってていた。
ーーーーこの鮮やかな青って、何ていう色だっけ。
「ねえ、彰、聞いてる?」
隣から、ミルクフランスを頬張りながら、砂月の大きな黒い瞳が、少し不満げに口を尖らせた。
「あー……かき氷でいいんじゃね?」
「違う!屋台は、かき氷で決まってるじゃん。看板書くのにアクリル絵の具がいるけど何色がいるかな?って聞いたのに」
「コイツはほっとけ、苺の赤と、レモンの黄色とだな、メロンの黄緑と、ハワイアンブルーだな、……」
愛子が、スマホ片手にメモアプリに入力していく。
小学生の頃、絵を描いた。確か好きな花の絵を描きなさい、とか、そんな感じで先生に言われて、俺はセルリアンブルーの絵の具で空を塗りつぶして、あ、そうだ、セルリアンブルーだ。
テレビに出てくるヒーローの名前みたいで、俺はこの色が好きだった。
「セルリアンブルー……」
画用紙の下部分を、茶色で塗りつぶしただけの地面には、砂月の好きなタンポポを描いたのを思い出した。
お世辞にも上手ではなかったが、クラスで砂月だけが、俺の下手くそなタンポポを見て喜んだ。