「そんなことで砂月泣かせんなら、俺、貰うよ?」

駿介が俺を見ながら、真顔で言った。

「じゃあ俺が、藤野のこと気になってるって言ったら?」

くるくる回していた葉をほろりと落とすと、駿介が、目を見開いて、口を開けた。

「は?……何て言った?」

予想通りの反応に、俺は口角が上がった。

「藤野って美人だし、気は強いけど、脆いとこあるじゃん」

駿介の顔が、面白いほど嫌悪感に溢れていく。

「彰、お前な、つまんねぇ嘘()くんじゃねぇよ」

「その言葉そっくりそのまま、お前に返してやるよ」 

起き上がって、暫く俺の顔を見ていた駿介が、不意に顔を逸らしてそっぽを向いた。

「愛子に何きいてんだよ!」

「お前な、二回も振られて、まだ諦めないとか鋼のメンタルだな」

たまには、駿介を揶揄い返すのも悪くない。

「うるせぇよ、砂月に年から年中引っ付いてる、お前に言われたくねぇな」

「ちなみにな、藤野にバレてるからな」 

俺の言った言葉の意味をすぐに理解したのか、駿介は、珍しく頬を染めた。

「だっせー。あーまじかよ!」

くしゃくしゃっと茶髪をかき乱しながら、俺から視線を外して、そっぽを向いた。