夜空には、不規則に星が散りばめられて、たなびく細い雲が、ストールのように半月を覆ったり、めくったりを繰り返しながら、夜を更に深く藍色に染めていく。

「なぁ、外で作って食うカレーは何であんな美味いんだ?」

ヤマモミジムクロジ科カエデ属と書かれた白いプレートの樹の下に、俺は、ゴロンと転がった。

夏独特の草の匂いと夏の空気が、ふわりと漂う。八月も終わりだ。どこなく夏の匂いも薄らいでいってるように思う。

「皆んなで食うのと、外なのと、自分達で作るからだろ」

ありきたりな返答をしながら、駿介が、俺の隣に転がった。俺達の寝転んでいる、テントから少し登った斜面からは、楽しそうに、はしゃぐ桃を囲んで、砂月達が談笑している姿が見える。

「何で砂月と喧嘩したんだ?」

駿介から、唐突に聞かれた俺は、僅かに間を置いて返事した。

「……してねーよ」

「嘘付くな、砂月泣いてたじゃん」

「しっかり見てんじゃねーかよ」 

ジロリと睨んだ俺を見て、駿介がクククッと笑った。

「……で?」

どうやら、俺が答えるまで聞くつもりのようだ。

「……なんかさ……砂月が隠してんだよ」

「心当たりは?」

「あったら怒鳴るかよ」

「そりゃ、やっちゃったな」

駿介は楽しそうに少し身体を起こすと、今度はこちらに身体を向けて頬杖をついた。