男は素直に従うかのように、頬杖をついたまま目を閉じた。

 僕が頭に触れてしばらくすると、意識を失ったように腕から力が抜けた。そして、支えを失った男の頭が、ガクンと崩れた勢いのままカウンターへ落ちた。

「うわッ、やばい!」

 僕が手を伸ばすのも間に合わず、がつん、と嫌な衝撃音が店内に響き渡った。

 先程奥の部屋に引っ込んでいた省吾さんが、その音を聞きつけて「何事だ」と顔を覗かせた。そして、カウンターに突っ伏している男と、つい言葉もなくおろおろとしている僕を見て、状況を察したように「なるほど」と呆けた声で言った。

「こりゃあ、また派手にいきましたなぁ」
「ま、ままままさか崩れ落ちるなんて思わなかったんですッ」

 どうしよう。喧嘩が強そうな人だし、起きたら殴られるかも。

 いや、その前に怪我をさせてしまっていたら……と僕が思っている間にも、省吾さんがすぐカウンターから回ってきて、男の顔を上げて額の様子を確認した。