「よく分からねぇが、お前の言う『夢渡しの能力』ってのは、誰かの夢と繋げるような力って解釈でいいのか?」
「えぇと、まぁ、ざっくり簡単に言えばそうなりますね」

 口で説明するのが難しい現象なのだが、男が勝手に納得してくれたので、僕は少しだけ拍子抜けしたような声を出してしまった。

「死んでしまった人間は、死の淵で最期の夢を見るといわれています。もし、お父様があなたの夢を見てくれていれば、そこに渡る事も可能なんです」

 僕は、緊張しながら慎重に言葉を選んだ。深い悲しみに捉われているこの男にとって、非常に繊細な問題である。怒りだすか、叱られるか、嫌悪感を剥きだしに席を立ってしまう行動を取られるのではないか、という覚悟はしていた。

 しかし、男はそういった大きな反応は見せなかった。クールにカウンターの方へ顔を向けたまま、頬杖をついたかと思うと、酔い心地の瞳を手元へと落とした。